触れることで診る~安心と正確な診断のために~

今も変わらず言っているのは、診察では「絶対に患者さんに触れなさい」ということです。
触診の難しさは確かにありますが、「触れなければ重要な所見を見逃す可能性がある」ということを忘れてはなりません。患者さんの立場に立てば、体に一切触れずにコンピュータの画面ばかり見ていると「ちゃんと診てもらえているのかな?」と不安になりますし、信頼関係を築くのが難しくなってしまいます。
特に若い先生方には何度も伝えています。話を聞いただけで薬を出すような対応だと、不信感を持たれてしまうでしょう。たとえ軽く触れるだけでも良いので、「しっかり診ている」という姿勢を伝えていくことが大切だと思います。
クリニック設計のこだわりと想い
大学受験の時には医学部ではなく商船大学や早稲田大学の建築学科を志望していたほど、建築が大好きでした。しかし、高校3年生のとき、医師である父と兄が二人で話しているのを聞いて、「医者でも良いかな」なんて思い、医師への道を選びました。
それでも、やはり考えてデザインすることは好きでした。最初の本院の建物は高校時代の同級生が設計してくれました。

提供された設計図をもとにデッドスペースを減らして節約を試みましたが、結果的に手狭な病院になってしまい、少し後悔しました(笑)。
その反省をもとに、外来棟を設計し、診察室・処置室・診察室をワンユニットとして、3ユニットの設計を導入しました。クリニックでは2ユニットの構成にしました。特にこだわったのは、整形外科の病院やクリニックにおけるトイレの設計です。松葉杖を使用する方が自由に利用できるよう、利便性と安全性を考慮することが重要です。そのため、ドアを設けずに外から見えないような配置にする工夫を施しました。
このこだわりは、馬橋駅のクリニックやおおたかの森クリニックにも共通しています。デザイン面にもこだわり、受付カウンターや診察室の机は特注品を採用しました。特に馬橋駅のクリニックの受付カウンターは独特のアール形状を取り入れたため、家具屋から「勘弁してくれ」と言われるほど手間をかけたものです。壁紙には腰の部分にリボンを配置し、両クリニック内に飾る絵やモニュメントは全て私の趣味で選びました。
機能とデザイン性を両立しつつ、さらに患者さんが落ち着ける雰囲気を目指し、壁や床も落ち着いた色合いにしました。